【特別コラム】新学習指導要領で言語形式・規則をどう扱うか by 吉田研作先生(上智大学名誉教授・日本英語検定協会会長)

先日、ある研究会で、新学習指導要領に基づいた「テスト」についての議論があった。大文字と小文字の区別ができること、頻度の高い連語(get up等)、よく使われる慣用表現(excuse me, thank you等)、平叙文、疑問文、命令文、代名詞(3人証単数など)、SVC、SVO等の基本文型を身につけることが「知識・技能」のところに示されているので、単元等の後のテストでは、これらの言語形式や規則が分かっているかどうかを見る必要がある、と言う。その結果、出てきた問題は、従来の文法問題(穴埋め、単語の意味、語順など)を問うものが中心になっていた。

これだけでも驚いたが、ショックを受けたのは、先生の中に、テスト範囲の言語形式や規則が十分に練習できなかったので、急いで暗記やドリルで生徒に教えた結果、生徒が良い成績を取った、と喜んでいる人がいたことだった。
新学習指導要領は、従来の構造シラバス(言語形式や規則の難易度を基づいたカリキュラム)から、ヨーロッパ言語参照枠(CEFR)で示されているCan-doの難易度(自分についての簡単な英語が理解できたり、話せたり、また、音声で理解できたものを文字にして読んだり、書き写したりして、自分の考えや気持ちを伝えること、そこから英語が使える世界を徐々に広げ、自分の周りの学校、更に、学校から一歩外に出た身近な環境についての話を理解したり、話したりすることなど)に基づいたカリキュラムへと大きく変わっている。つまり、焦点は言語形式ではなく、英語で何ができるか、というコミュニケーション自体に移っており、そのコミュニケーションをする際に必要となる言語形式や規則は、コミュニケーションする過程で学んでいくことになっている。
従って、テストも、単に言語形式を問うのではなく、現実的は文脈の中で表されている「意味」を理解したり、伝えるために必要な言語形式の理解をみるものでなければならないのである。

上記のことは下記のように表すことができるだろう。(話すことの「やりとり」の例をその下に示す)

(小学校外国語授業づくり研究会による解説)

上のコラムは本研究会の特別顧問である吉田研作先生から寄せられたものです。コラム内で取り上げられているのは、中学校での話題ですが、小学校外国語においても通じる部分があります。「何のために教えるのか」「何のために評価するのか」を今一度考えていくことが大切です。従来の文法問題でどんな力が測れるのか。テストのためのドリル練習は、本当に力がついたと言えるのか。それらはどんな意味があるのか。よくよく考える必要がありますね。